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「美容院のCRM」

最近、髪を切りに行く度に思うのが、大手美容室のサービスの良さ。
1年くらい前から通っているところがあるんだけれど、ホント、ちゃんとしている。
顧客との良好な関係を継続的に築くことでロイヤルティを高め、収益向上につなげていくというCRM(Customer Relationship Management)の発想が、美容業界へも徐々に浸透してきていることを感じさせられる。

まず、電話での予約受付。
店に直接ではなくて、受付専用番号に電話。すると、発信者番号を検知して自動的に顧客情報(氏名や通っている店舗、担当者情報など)が表示される(と思われる)。こちらから名前や担当者を告げなくても、「○○様ですね、ご担当者は××でよろしかったでしょうか」と言って来る。毎回の予約の度に名乗ったり、担当者を告げるのは何気に面倒なので、結構嬉しい。

店に行くと、カードを提示してロッカーに荷物を預ける。ロッカーもスペースを有効活用しながらも上着やかばんを無理なく入れられるようなつくりになっている。

またこの店では、1人の美容師が多くの顧客を相手にしなければならないため、洗髪→カット→カラーリング→洗髪→ブローといった一連のプロセスにおいても徹底した分業が図られている。俗人的な要素の低い洗髪やカラーリングなどの作業はアシスタントが担当し、カットや仕上げのブローは専属の美容師が担当するといった具合だ。こうした分業は、客の立場からすれば「ぞんざいな扱いを受けた」という印象を受けやすいのだが、そこにも配慮が見られ、アシスタントはよく教育されており、皆にこやかに話しかけてきて態度が良い。

毎回のカットの履歴やカラーリングで使用した薬品の調合などに関する情報も、カルテとして残されている(と思われる)。そのため、たまたま担当者が休暇の日に別の店舗に行ったとしても、以前やったカラーリングと同じカラーをオーダーすることも簡単にできる。
実際、以前は代官山店に通っていたが、あるとき原宿店の別の担当者に切ってもらったときも全く面倒がなかった。以降、原宿店に通っている。

また、カットやカラーリング、ブローに至るまで、美容師は細かにその手順の内容を説明してくれる。ワックスを使った手ぐしの入れ方なども丁寧に教えてくれる。また、使っている整髪料なども、希望すれば店頭で販売してくれるようになっている。

このようなサービスの発想は、まさにCRMではないか。

よく「CRMの原点は駄菓子屋のおばちゃんである」ということが言われるが、いわゆる個人経営の駄菓子屋においては、店主たるおばちゃんが、顧客である子供たち一人一人の顔や好みなどを全て把握してサービスを行なうことが可能だ。この当たり前のサービスが、事業活動の大規模化と顧客チャネルの多様化により実行困難になるところにテクノロジーの出番がやってくる。

この美容室も、個人経営の1店舗経営から、多くの美容師を擁する複数店舗経営という拡大路線の中で、無理なく適正規模での技術を導入し、顧客満足度を高めている良い例だと思う。

視点を変えて美容室という事業の特性に着目してみる。

(1)加入者型に近いビジネスモデル
言うまでもなくサービス業であるが、この店のような大手美容室の場合は、いわゆる「加入者型(Subscribe型)」に近いモデルとも言える。不特定の顧客に対してサービスの売り切りを行なうのではなく、会員登録を行った特定顧客に対して定期的にサービスを提供することで、継続的に対価をもらう形態である。

(2)特定従業員(美容師)への依存度が高い
消費者は「美容室」ではなく「特定の美容師」を選んで髪を切っており、その美容師が持つ技術に対して金を払っている。そのため、美容師が転籍した場合には顧客も一緒に移動してしまう場合が多い。

まず(1)を考えた場合、重要となってくるのは顧客のリテンション活動である。店先で呼び込みをかけ、たった1回髪を切ってもらっただけでは儲からない。定期的に来店してもらい、継続的に出費してもらうことが収益向上のキーとなる。特に客層の多くを占める女性客は意外にドライであり、ちょっとした不満やトラブルですぐに他の美容室へ乗り換えてしまうため、ロイヤルティ形成は非常に困難であると思われる。

(2)については、従業員満足度の向上と離職率の低減が課題となってくるだろう。高い技術を持ち、多くの顧客をつかまえた美容師を他店に次々と奪われていては、全く意味がない。インセンティブの導入や職場環境の改善などを通して優秀な従業員が好んで留まる職場を形成することが重要となるだろう。

前半で自分の体験を紹介したが、この他にも、この美容室ではいくつかの顧客リテンション活動を実行している。例えば会員カード。初回来店時に発行されるのだが、来店を続けるうちにランクが上がる。僕は現在「SILVER」カードだが、奥さんは既に「GOLD」カードになっている。ランクが上がると毎回の料金が10%OFFになったり、トリートメント無料などのさまざまな特典が用意されている。こうした取り組みは、個々の美容師を向き勝ちな顧客の目を「美容室」自体に向けさせ、ロイヤルティを高めるために非常に有効な施策である。

こうして褒めちぎってきたが、まだまだ課題が多いことも事実。やはり情報化が遅れている業界のためか、IT関連のサービスはまだ一歩遅れた感が否めない。以下に奥さんの意見もとり入れた上でいくつか提言をば。

・Webサイトでの情報提供
意外としっかりとしたWebサイトを持っている美容室はまだ少ないとか。
はじめていく美容室であれば、美容師の情報(顔写真・性別・得意なカット・略歴など)などをあらかじめ確認した上で来店できると良い(らしい)。

・インターネット予約の仕組み構築
CTI(Computer Telephony Integration)を活用した受付の仕組みに加えて、インターネットから予約する仕組みが是非欲しいところだ。顧客の多くは日中仕事場でPCを使っており、インターネットに常時接続されているはずだ。これにより利便性は更に向上する。

・顧客情報の更なる整備
個人としての顧客情報だけでなく、顧客同士の関係などの情報なども美容師任せでなく、集中的に管理できると良いのではないか。特に女性客などは、友人の紹介などを頻繁に行なうらしいし、うちのように夫婦で同じ美容室に通っている場合もある。そうした部分を加味した応対やサービスなどがあると、一層良いと思われる。

・特定顧客層への定額制の導入
これはやり過ぎか?ただ、月に何度も来店して金を落としていくような優良顧客については、年間契約などを取り付けて定額料にてサービスを提供することも良いのではないか。

これまで中規模以上の企業を中心に語られることが多かったCRMであるが、美容室を始めとした小規模サービス業界でも今後は更なる進展があるだろう。
システムで飯を食う側から言えば、こうした仕組みを低いコストで導入してもらうためには、共同利用型プラットフォームの構築や、アウトソーシングビジネスの立ち上げが考えられるかも知れない。

コメント:1

noumih 2004年3月18日 13:07

おっしゃる通り。まさに同感。
記事に挙げられている美容室という事業の特性、およびその以降の
提言がそのままあてはまる業界は、まだまだあると思うし。
例えば、風俗業界とか。
まさに、こういった一つ一つの店舗は大きくないけど業界としては大きい
小規模サービス業界への共同利用型PFやアウトソーシングビジネスは、
意外といけそうだよね。

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