- 2004年3月 2日 17:01
- 90 マジメな話
翔ソフトウェアというサイトで、スラップスティック アジャイル プロセス導入記という記事を読み、「パターンランゲージ」という概念を知った。
「パターンランゲージ(Pattern Language)」とは、元々建築家のChristopher Alexanderにより提唱された市民参加型の建築・都市デザインプロセスに端を発する。合意形成とデザイン、施工などから成る一連の建築プロセスにおいて、個々の局面での問題解決シーンをあらかじめパターン化しておくことで効率よく質の高い建築を実現しようという手法を指す。
最近ではこの考えが汎用化され、あらゆる知識エリア・活動エリアにおける効果的な合意形成や創造行為をサポートする共通言語として捉えられることも多い。IT分野においては、このパターンに基づく思考整理や合意形成の手法を用いて、要求仕様の整理から機能の抽出、開発までのソフトウェア開発プロセスを効率化しようとする動きもある。XP(eXtreme Programming)に代表されるようなアジル(Agile:アジャイル)開発などとも親和性の高い概念となっている。
ここで言う「パターン」とは、問題の典型的な解決法をある定められたフォーマットで記述したものであり、「パターンランゲージ」は、相互に関連した「パターン」の集合帯で、より体系的に問題解決を行うためのもである。
こうした取組みは、「暗黙知」を「形式知」に変換しようだとか、SECIモデル (セキモデル)のように循環させようだとかという議論や、組織全体のパフォーマンス向上のための標準化への取組みなどがベースとなっているのだろう。
※リンク先の記事ではこれらの概念が若干煩雑になっている気がするが。。
個人的には、このようなチャレンジングな取組みが大好きだし、「暗黙知」を「形式知」に変換するナレッジ・マネジメントや、圧倒的な効果と生産性をもたらす「パターンランゲージ」の整備に携わってみたいとも思う。ただ、気をつけなければならないのが、こうしたパターン化・標準化の取組みというのは、元来知的探究心の旺盛な人間にとって「危険な果実」であり、他者の創造的思考やマイノリティの可能性を奪ってしまいかねないということだ。
友人のabe++は、自身のblogにおいて、「標準化する人・される人」「仕組む人・仕組まれる人」の関係を取り挙げ、仕組む側に立つ人間がしばしば自身の視点を見失い、個別最適に走る危険性を指摘している。
加えて、事象のパターン化に代表される「暗黙知」の「形式知」化には常にオーバーヘッドが伴うことを認識しなければならない。その道10年ベテランが書いた本を読んだからといって、すぐに同じような仕事ができるわけはない(形式化された知は目減りしている)し、そんな本を読んでしまったばかりに、読まなければ行っていたであろう試行錯誤や工夫をしなくなることもあるだろう(形式化された知が、暗黙知発達の阻害要因となる)。
こうした点に配慮することなく、不用意にパターンランゲージと称して他者の創造的活動を妨げるようなコンテンツを放出することは避けなければならないだろう。
以下に対の概念を挙げる。本当に大事なのは常に後者かも知れない。
しかし、混沌とし、ともすれば無気力な相対論に陥ってしまいがちな人間にとって、理想的・普遍的なルールがあると信じて標準化・パターン化に取組むことは決して悪いことではないと思う。
- 戦略と実践
- 標準化と遵守
- 汎化と特化
- 理想と現実
- 普遍と混沌
- 静的と動的
- 共通の限定と個別の自由
- 知的探究心と無気力な相対論
重要なのは、本末を混同しないこと、傲慢な標準化論者・パターン化論者となって他者の反感を買わないようにすることだろう。
流転の世界である感覚物に対して、学問知識の成立を問うたイデアをめぐる議論も、そんなところにあったのだろうか。なんつって。(笑)
【参考】
Biztech special - 形式知/暗黙知、SECIモデル
技術系メーリングリストで質問するときのパターン・ランゲージ
要求獲得と合意形成のためのパターンランゲージ入門 ※PDF、あんまりオススメじゃない
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