- 2004年1月28日 15:06
- 90 マジメな話
以前に類似した仕事をやったことのある人間と、全く経験のない人間とでは、前者の方がより効率的にうまく遂行できると考えるのは自然である。だが、実際には、期待通りの結果にならないことが多いのも事実である。何故か。できる人とできない人がいるだけと言えばそこまでだが、もう一つ突っ込んで考えてみたい。
前に同様の仕事をやったことがあるのに、初めてやる人間より効率的に仕事ができない、または期待されたほどの圧倒的な違いを発揮できないことの理由は、その人が「経験を能力に昇華できていない」ことが原因であると思う。
基本的に経験というものは、「やったことがある」という単なる事実であり、「次に同じようなことができる」ということに対して何の保障にもならない。「やったことがある、うまくやっていた」ことが「次もうまくやれる」とイコールになるのは、2つの仕事が全ての点(ゴール・成果物内容・作業項目とその内容・スケジュール・コスト・・・)で酷似していた場合のみである。だが、そんな事は実際にはほとんどないだろう。
にも関わらず、実務の世界においては、明確な能力評価の物差しが未発達であることもあってか、あいまいな「経験」というものを元にしたジョブアサインや責任委譲が行われるケースが多く、結果としてプロジェクト遂行上の障害となったり、働く個々人にとっても不幸な結果を招くことが多くなっている。
それでは「やったことがある」と「次は人よりうまくやれる」との間に介在するものは何であろうか。僕は個人の「汎化/分化フィルタリング能力(造語)」であると考える。
何かを経験する際に、常にその内容を汎部(多くのケースで適用可能な共通的な部分)と個別部(今回のみに適用可能な特殊な部分)に分けながら物事を進めていく人間は、経験から確実に能力を醸造することができる。これを経験のフィルタリングと呼びたい。
このフィルターが機能していない人間は、新しい仕事に直面した時に、
・短絡的に前回と同じだと考えて盲目的に同じやり方で臨む
・前回との違いにばかり固執するあまり、せっかく培ったノウハウを適用できない
のどちらかとなってしまうケースが多い。いずれにせよ、大きな見落としや、判断ミスを誘発するため失敗する可能性が高い。
よく、物事を教わり理解することを「消化する」と表現するが、まさにその通り、要らないもの・要るものを一瞬一瞬で選り分け、整理して身につけていくことが重要なのだと思う。個人的には、汎化と分化にも更にレベル分けができると、より効果的に能力伸張がはかれると考えている。
例えば、システム構築という仕事に携わるのであれば、ある1つのプロジェクトでの経験の中には、「システム構築全般」に通用する真理や「CRMパッケージソフトウェアを活用したSI」共通のノウハウ、そして「地域系通信事業者の顧客管理全般」に共通するコツなどが散在しているハズである。同様に、今回限りの「個別」として分化したものの中でも、一生活用の用途がないようなものもあれば、イレギュラーケースとして他業者から見て面白いネタとなるものもあったりもする。
仕事をする人間としてこれから経験を積んでいく中で、より高い効率で能力を向上させ、仕事においてより大きな責任と権限を獲得していくためには、この汎化/分化フィルタをフル稼働させていかなければならないと考えている。高度なフィルタを持った吸収力の高い人間であれば、カレーパンを作っていてもパンとカレー全般を意識するだろうし、クリームパンを作れと言われても戸惑わないだろう。また、カレーとパンを本格的に学ぶことになれば料理や食文化を考え出すだろう。
最後に、ジョブアサインをする側、人をマネジメントする側の方々に言いたいのは、こうしたフィルタ能力ないしはフィルタリング後に残ったものをみて評価する方法を見つけて欲しいということ。プロジェクト終了後に論文を1本書かせるなり何なり、方法はあるだろう。
事実としての経験をデータベース化してスキルマッチを行ったり、人事評価に組み入れたりしてもあまり良い結果は生まない気がしますが。
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